避妊・去勢手術について
一生に一度の手術だから
従来、避妊・去勢手術は望まない妊娠を避けることを目的として実施されていました。
しかし動物たちの生活環境の変化とともに手術の目的も多様化しています。
手術の目的は主に下記のようになります。
- ご家庭の環境
- 同居の動物(異性の存在や互いの関係など)
- 手術を受ける動物の特徴(品種や年齢など)
- 体質や持病
- 手術が体に及ぼす影響
ご家族の考え方などにより、決して一様ではありません。
避妊・去勢手術は全ての個体に等しく推奨されるものではなく、実施するかどうかは上記のことを踏まえ、個別に判断する必要があります。
まずは手術を実施する目的を明確にしましょう。そしてその目的が手術で達成可能かどうか、手術の欠点を上回る恩恵が得られるかどうか、他に有効な方法はないかどうかなどを十分に検討する必要があります。決して目的のない手術、安易な手術にならないよう、手術の意味をご理解された上で決断して下さい。一生に一度の大切な手術だから、十分に説明をさせていただいた上で、より良い手術ができるよう万全のサポートをいたします。
去勢手術
オスの犬、猫におこなう去勢手術(精巣摘出術)にも様々なメリットがあります。
早期の手術でマーキング行動が抑制できます。これは犬では足を上げておしっこをしませんし、猫の場合には、家の中のいろいろな場所にオシッコを引っ掛けると行った行動が予防できます。
また個体差はありますが、攻撃性が緩和し性格が穏やかになります。また、下記のようなメリットがあります。
前立腺肥大の発生率が低下します(加齢と共に発症率は上がります)
会陰ヘルニアの発生率が低下します(特にW.コーギーやM.ダックスに多い病気です)
精巣腫瘍の発生を防ぎます(停留精巣・陰睾の場合、腫瘍化する可能性が高くなります)
肛門周囲腺腫の発生率が低下します
このように去勢手術には様々なメリットがありますので、当院では若いうちに手術を受けられることをお勧めしております。
避妊手術
メスの犬、猫におこなう避妊手術(卵巣・子宮摘出術)は様々な病気の予防効果が期待できます。特に乳腺腫瘍に関しては、早期の手術によって発生をほとんど抑えることが可能です。乳腺に発生する腫瘍のうち、犬では約50%、猫では約70-90%が悪性腫瘍(がん)です。
★手術の時期と乳腺腫瘍発生率の関係
(イヌの場合)
初回発情前 0.05%
発情1回目以降 8%
発情2回目以降 26%
(2回目以降は手術しない場合と発生率は変わりません)
上記のように、早期の手術によって、乳腺腫瘍の発生率がかなり下がります。これは猫でも同様と考えられています。子供を作らないと決めている場合には、生後6ヶ月前後での手術をお勧めいたします。
避妊手術によるその他の病気の予防について
卵巣と子宮を摘出しますので、子宮蓄膿症や卵巣腫瘍など、卵巣、子宮疾患の発生を予防できます。また、ソ径ヘルニアの発生率が低下することもわかっています。
さらに、望まない妊娠を避けるだけでなく、発情出血や発情期のわずらわしさ、本人のストレスもなくなります。このようなメリットがたくさんあります。